『1234』 大江千里 1988年 レビュー

「1234」名盤レビュー

このアルバム「1234」とは

これは大江千里 7作目のオリジナルアルバムである。

発売当時のボクにとって、大江千里というのはそれほど優先順位の高いシンガーではなかった。

新譜が出てもCD・LPメディアは買わない、「新作」料金ではレンタルせず「旧作」になるまで待つ、ぐらいの扱いだった。

もちろん彼の歌は、BGMとして質が高く優しいポップソングであったが、ボクには心の底から共感できる曲がまだ1曲もなかった。

そして、この「Rain」を聴くことでで、大江千里は「みんなの」ポップシンガーから「ボクの」ポップシンガーになったと思う。

また、この曲を聴いたことで、「ボクの」ものになった過去の曲も多い。

曲 目

  1. GLORY DAYS
  2. 平凡
  3. ROLLING BOYS IN TOWN
  4. Rain
  5. ハワイへ行きたい
  6. サヴォタージュ
  7. 帰郷
  8. 昼グリル
  9. 消えゆく想い
  10. ジェシオ’S BAR

全作詞・作曲: 大江千里、全編曲: 大村雅朗

↑クリックで試聴できます

懐かしんだり、アルバムの雰囲気をお楽しみください。

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1. GLORY DAYS

大江千里版の「愛は勝つ」である。

きみと出逢えてよかった 愛だけが今力になる

細々したことを全て呑み込んで、あえて上のように歌って見せるシンガーは日本では特に貴重だ。

結果の話じゃないんだよ、そう思って願えることが大事なんだよ、と。

歌詞中でのGLORY DAYS(絶頂期、栄光の日々)は、今なのか、過去なのか、未来なのか。

GLORY DAYSは過ぎてはじめてわかることだから、過去なのだろう。

そして、過去は現在も含んでいて、未来もそうなるように願ってると聞こえる。

確かな気持ち抱きしめてたい ひとときももう逃さない

再会できた奇跡をよろこんでいる。そして歌う。

「若くて八つ当たりしたこともあったけど、あの頃の二人は最高だった。

会えなかった時の分も君にまなざしを送るよ、まだ続いているんだよボクたちのGLORY DAYSと」


余談であるが、サビ頭の歌詞は最初「きみと出逢うレボリューション」だったらしい。

3年後のアルバム「HOMME」の1曲目「LOVE REVOLUTION」にその言葉とコンセプトが受け継がれているようだね。

GLORY DAYS
大江 千里
¥ 250

2. 平 凡

1曲目と比べてかなりヘビーな歌詞です。

「一人でいるのがイヤで きみと付き合って きみの身体あてにしてるけど

本当は心から誰かを愛したい 心からつながりたい」

って、どうです?

アルバム『未成年』の「A MOONLIGHT EPISODE」の方がもうちょっと可愛げがあります。

しかもタイトルが「平凡」ですから、「オレの恋愛はこんなんばかりだよ」「こんな充実していない毎日さ」っていう風にもとれます。

もっと底辺で切実に悩んでいる男性が多い中、基本性能(スペック)が高い男の悩み、だと思われてもしょうがないですね。

確か、漫画、TVドラマのモテキでは「格好悪いふられ方 」のことをこう批判してたような…

ところで「明星と平凡」って知ってます?

はじめ、その平凡かと思ってました。

古き時代のアイドル雑誌。

平凡
大江 千里
¥ 250



3. ROLLING BOYS IN TOWN

おそらく、この曲はサビをノリのままアカペラで作って、歌詞を後付けしたものでしょう。

「ろーりんぐぼーいず、ろーりんぐがーるず、」

一回聞いたら耳に残ると思います。

ROLLING BOYS IN TOWN
大江 千里
¥ 250

4. Rain

初めて聞いた時から、この曲は気になっていた。

このアルバムがリリースされたのはボクが大学生だった時で、若い男子によくある悩みを抱えていた。

そんな中、「Rain」は自分にオーバーラップするようにも聞こえ、そうだよな、とかそうじゃないよとか、涙目で聴いたときの方が多いかもしれない。

Aメロの三段の歌詞を引用しておくので、この部分で何かを感じる人は是非聞いてみてください。

Aメロ(1)~ Aメロ(3)

言葉にできず 凍えたままで 人前ではやさしく 生きてきた

しわよせで こんなふうに雑に 雨の夜にきみを抱きしめてた

別々に暮らす 泣きだしそうな空を にぎりしめる強さは今はもうない

変わらずにいる 心のすみだけで 傷つくような きみならもういらない

肩が乾いたシャツ 改札を出る頃 きみの町じゃもう雨は小降りになる

今日だけが 明日に続いてる こんなふうに きみとは終われない

気になる人はとにかく聞いてください、というのがボクからのアドバイスです。

最近は、槇原敬之や秦基博もカバーしているので、そちらから入ってもいいかもしれません。

makihara noriyuki cover

“Listen To The Music””Listen To The Music 3″と同シリーズの2枚に収録しているカバーなので、よほど気に入っている歌なのでしょう。
槇原本人も、大江千里の音楽にはすごく影響を受けたと言っています。

hata motohiro cover

映画「言の葉の庭」で使われたカバー曲。秦基博というより監督 新海誠が好きなんじゃないかな。この映画を観ると新海監督の中の「rain」の原風景が垣間見れるでしょう。
ちなみに「言の葉の庭」のヒロインが大ヒット映画「君の名は。」の一場面に出演しています。

Saya Asakura COVER

民謡日本一の女性シンガーのカバー

Rain
大江 千里
¥ 250

5. ハワイへ行きたい

前年に発売されたアルバム『OLYMPIC』(オリンピック)の1曲目「回転違いの夏休み」に相当する曲。

あまり深く考えずに楽しめる曲ですが、もしかしたら深い意味があるのかな?

まあいいかあ、ぐらいにノリのいい曲でもあります。

1995年に発売されたカズン(覚えていますか?)のファーストアルバムにこの曲が収録されているようです。

聴いてみたいけど、入手できるかな?

ハワイへ行きたい
大江 千里
¥ 250

6. サヴォタージュ

ボクはこの歌が好きなんですよ。

結婚もする 子供もつくる ありあまる情熱

この歌詞、それにイントロ、最高ですね!

やけにハキハキと力強く歌う大江千里くんの確信めいた自信が、この歌に説得力を与えています。

ケチをつけるわけじゃないのですが、この曲のタイトルが「平凡」で、2曲目のタイトルが「サヴォタージュ」でもしっくりくるんじゃないかな、と思います。

サヴォタージュ
大江 千里
¥ 250



7. 帰郷

1987年、モスクワにセスナ機で着陸した事件とのこと。

前にも書いたけどボクは歌詞をほとんど見ない、耳から入ってくる情報が全てなんだけど、次の部分は勘違いしていた。

×「夕暮れのあとで 必ず彼女とわかれて」 → 〇「インフレのあとでかならず 彼女とわかれて」

インフレの歌詞が別れの理由、しかもサビに出してくるとは、さすが大江千里である。

この歌は、耳からだけの情報では難しすぎるかも。

レジを打つ娘を笑う 隣の老夫婦には子供がいない

鈍行で今住む町を 2日も離れると全部が終わる

ああ随分 傷つけたけど きみとは終われない

こういった歌詞はなかなか常人は書けない。大江千里すごし。

帰郷
大江 千里
¥ 250

8. 昼グリル

「彼女ともめた日の午後 あてもなく国道を歩いてみる

彼女の言葉と態度の裏側の意味について考える

渋谷の主婦、屋上ひなたの遊園地、郊外の公園と

目に見えるものごとの裏と表を考える

気が付くと都心を離れてしまってた」

ごくごくまじめに彼女と向き合って、悩んでいる歌のように思います。

彼女と付き合いながら本当の愛を熱望している「平凡」より、よっぽど人間らしい主人公です。

昼グリル
大江 千里
¥ 250

9. 消えゆく想い

このアルバムは曲によって、ふり幅がすごい(トリッキーな曲が多い)ので、この曲が入っていることで、すごく安心する。

まさに大江千里の真正のラブソングである。

かなしみは いつも別々が 背負う

大事な夢も かわりになれない

幸せはいつか 別々の 違う

痛みを 話せるときにわかる

すごくいい歌詞であり、その連続である。

「今でも きみが近くにいるような気がするけど

 きっと少しずつきみを忘れていくよ

 そんなボクを許さないまま覚えておいてほしい

 さよなら愛した人よ

 偶然に逢っても 気付かないふりをするよ」

要約しても伝わらない気がする。

やっぱり歌詞は言葉のチョイスと、その言葉への思い入れの強さだね。

消えゆく想い
大江 千里
¥ 250



10. ジェシオ’S BAR

これもノリのいいい、「ハワイに行きたい」に近い曲ですね。

前作『OLYMPIC』の「STELLA’S COUGH」、翌作『red monkey yellow fish』の「おねがい天国」と同様のテイスト。

4の5の言わず、コンサートではダンサーと一緒に歌って踊って楽しいでしょうね。

ジェシオ’S BAR
大江 千里
¥ 250


最後に、amazonのレビューから共感できるコメントを引用させてもらいます。

初めて心に響いた曲
このアルバムの中にある「GLORY DAYS」という曲。
まだ中学生だった私の心に初めて響いた曲でした。
「君と出会えて良かった。愛だけが今、力になる・・・」
まだ「愛」なんて判らない私だったけど、ジーンと染みていきました。
このアルバムにはそんな心に染みる曲が沢山詰まっています。
彼のわかりやすい優しい歌詞は今の流行りの曲には無い聞きやすく、心地よい気持ちにさせてくれる何かがあります。

———AMAZONレビューより———

そうですね、このアルバムには心にしみる曲が沢山詰まっていますね。

ボクはこのアルバムタイトル「1234」の意味をあまり考えたことがありませんでした。

今回レビューするにあたり、歌詞から全て見直すと、別れから再会までのどれかの時期にあてはまる曲が多いことに気付きました。

無理やりな解釈になりますが、読んでください。

1.出会い 2.恋愛 3.別れ、の3カウントをひとつの括り(ルール)とすると、10カウントルールに変更しても「君とはつながって」いたい。

その再出発の意味の4を加えて「1234」じゃないかと、思いはじめています。

いろいろあって二人の仲が「123456」とか「123456789」まで行ってもいいじゃないか、と。


『HOMME』 大江千里 1991年 レビュー
『1234』 大江千里 1988年 レビュー
『未成年』 大江千里 1985年 レビュー


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