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「未成年」名盤レビュー
このアルバム「未成年」とは
この未成年は、大江千里3枚目のアルバム(LP盤)です。
シンガーソングライターの3枚目のアルバムというのは結構重要で、今後の方向性まである程度予言されている、とボクは考えます。
3作目ぐらいから制作過程に自己主張が入る余地があると思うからです。
当時、レンタルレコードという(CD盤に比べてすごく巨大な)レコード盤を貸し出すお店があったのですが、そこで借りてテープに録音したものを聞いていました。
高校生だったボクは気になるアーティストは一通りチェックしていましたが、大江千里という女性受けする半アイドル的な存在というイメージと、アルバム楽曲にちょっとしたギャップがあり少し戸惑いを感じました。
「REAL」発売ぐらいから変わってきたようですが、世間的にも1枚目、2枚目のアルバム、および「十人十色」までは、どうも若い女性をターゲットにした軟弱なシンガーソングライターとみられていたように思います。
そして、女性向けにセールスすればするほど、それに伴い男性は引いていく状態でした。
大江千里っていいよね、って男同士口にしずらい雰囲気があったのです。
男性ポップスのシンガーソングライターというジャンルはまだ確立されていなかったので、しょうがないかもしれません。
「格好悪いふられ方」よりまだずっと前のことです。
曲 目
全作詞・作曲: 大江千里、全編曲: 清水信之
懐かしんだり、アルバムの雰囲気をお楽しみください。
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1. REAL
このアルバムの中で一番有名な曲なのではないでしょうか。
前シングル「十人十色」がヒットしたこともあり、この曲もCDショップやその他店内でよくかかっていました。
wikiをみると関係のない2曲を、アレンジャーの清水さん提案でまとめた曲だとか。
「リアルに生きてるか」とメッセージ色が強いのですが、このメッセージはリスナーに向けたものというより、歌詞の中の住人、自分自身および別れた彼女に向けられているように強く感じます。彼女に呼び掛けているようで、自分自身に言い聞かせているようにも感じます。
清水さんのアレンジの骨太さもあって、とても好きな曲です。
2. SEXUALITY
sexualityとは性的関心、性欲、性行為を表します。
まだ付き合ったばかりで、男女ともに性的な関心が非常に旺盛。
渋滞の車内でもキスを求め、もう何も残らなくても構わない。
彼女も同じ気持ちだけど、背徳的な罪悪感から主人公を「全てが終わりそうな眼」で見る。
こんなに先を急いじゃ、二人の間に何にも残らないよ、という不安も彼女にはある。
主人公は、そんなこと構うものか、と刹那的にsexualityを満たすのであった。
付き合いたての若いカップルはほとんど、心配ない、全てうまくいくよ、って思ってるんじゃないかな?
3. A MOONLIGHT EPISODE
もしかして君とこのまま うまくゆくのかな
前の誰かと比べながら うまく愛してるボクを
とか
はえ際を指でたどると同じ目をしてるね
散らかした床をころがって ふたりを重ねてるボクを
とか、千里くん、君はアイドルなんだから、こんな歌詞を作っちゃだめだよ、と思いながら当時聴いていました。
こんなことじゃ、スガシカオの「かわりになってよ」と同じだよ。
大江千里への印象を変えた1曲でした。
4. 真冬のランドリエ
このアルバムは、彼女との別れ間際、別れた後の心配などの情景が多いようだ。
別れ前の二人の様子、別れの動機はなく、離れていく心理描写を中心に描かれている。
『未成年』というのもそういう意味か、自分が「未成熟」だから「未成年」だから、別れという結論になるの?、という自問自答なのだろうか。
この真冬のランドリエも別れていく様子を描写した歌詞である。
穏やかな曲調だけど、去られるほうに救いはない、ただ長く見送ることで何かが変わればとその場を動けない、主人公。
二度と恋などしない、と。
5. もう一度X’mas
清水さんアレンジのおもちゃ箱のような楽しい曲です。
珍しく内容も、少女漫画ばりに100%ハッピーな歌詞です。
十人十色といい勝負です。
アルバム全体のバランスは大切ですね、
望んでいる人もいるしね。
6. 赤茶色のプレッピー
プレッピー(preppy)とは、名門私立学校に通学している良家、お金持ちの子息に対する俗称、らしい。
このレビューを書くまで約30年間この意味を知らずに、曲を聴いていた。
大江千里の歌詞って、結構わからない単語た出てきたりする。
ランドリエとか、コインローファーとか、
まだインターネットのない時代だったし、調べようがなくて素通りしてしまうものも多いんだよね。
この曲もわりかし幸せな曲です。
7. プールサイド
このアルバムのプロデューサーに、千里くんが初対面で弾き語りで聞いてもらった曲、だったかな?
アレンジがシンプルでゆったりしており当時はあまり印象に残らなかった。
歌詞も、詞中二人の関係も、メロディーも、不安定な中バランスをとっており、緊張が崩れたら印象も内容もがらっと変わってしまいそうな微妙なテンションである。
一時的な安定なのは分かっているけど、あえて「しばらくこうしてい」ることに主人公は自分をゆだねた。
8. 渚のONE-SIDE SUMMER
ひと夏の恋の歌でしょうか。
「駅で手を振って別れて、お別れ。でも、気持ちはまだ残っている。ひと夏かぎりの恋人ととられてもしょうがないけど、自分から行動しなくちゃ二人の未来はないよね。夏が終わって、あらためてハガキを書くよ、夏だけの恋じゃないよと意味を込めて」
いい、歌です。
9. 十人十色
味覚糖のCMソングがこれ。
十人十色 きっと世界一の幸せにさせる
って、日本語的に大丈夫なの?って、当時気になって気になって仕方がなかった。
曲調もポップだしノリもいいし、嫌いではないのですが、「100年分も抱きしめる」とか「愛せば愛するほど 臆病な男になるよ だからクールにほほえんで」とか「まばたきと同じ数だけKISSをあげる」とか、ちょっと思春期の高校生には受け入れがたいものがありました。
100%ハッピーの歌 2曲目です。
10. ナチュラル
後々発売する名作「1234」に通じるような歌詞世界。
この歌を聴いて、大江千里はポップシンガーだと確信した。決してアイドルじゃない。
まず曲順として、アイドルであるならば、このアルバムの最後の曲は絶対に『十人十色』のはずである。
いろんな曲がありましたけど、最後はこの曲でハッピーになってね、と。
でも実際は以下のような歌詞のこの曲でアルバムを締めています。
「一緒に住んでいた年下の彼女が荷物をまとめて部屋を出て行った。自身のゆずれない生き方を持っている彼女がまぶしく感じる。オレは何をやってるんだろうな?これから誰かと付き合っても、幸せになれないんじゃないか、自分自身のことだってよくわからないのに、もう若くないのに」
曲が終わってもメトロノームがなり続けるのが印象的です。
一つだけ間違いなく言えること、まだ25歳でしょ、「もう若くない苛立ち」なんて言ってほしくないな。
最後に、amazonのレビューから共感できるコメントを引用させてもらいます。
最近大江千里にはまってまずどのアルバムを買おうか?と検討しましたが、
テープを持ってた1234と昔姉が聴いてるそばでもらい聞きしてた「未成年」を購入。全部良い曲ばかり。音もいいです。中古のを買うより再販のBlu-specCD2のを購入したほうがいいです。
澄んだ感じや尖った感じが際立ってるから。Blu-specCD2で失敗だったかな、と再販の別のアーティストのアルバムでは思いましたが、
このアルバムはBlu-specCD2の方が個人的には良いと思います。
アルバム全体のまとまりもいいし、良い曲ばかりなので
ベストを購入するのもいいですがこのアルバムはぜひ押さえておいてほしいです。———AMAZONレビューより———
大江千里から2枚選択で、『未成年』と『1234』を選ぶとは、なかなかですね。
ボクと趣味がぴったりかぶります。
■『HOMME』 大江千里 1991年 レビュー
■『1234』 大江千里 1988年 レビュー
■『未成年』 大江千里 1985年 レビュー