ページコンテンツ
スガシカオ 『 Sugarless 』レビュー
このアルバム
『 Sugarless 』は、2001年に発売された スガシカオ 最初のベストアルバムです。
カテゴリーはベストアルバムだが、内容はSMAPへの提供曲である「夜空ノムコウ」「ココニイルコト」のセルフ・カヴァーとシングル曲“B面集”である。
小田和正が10年に一度の名曲と評した「夜空ノムコウ」をスガシカオが歌唱したことで、スガファン以外も待ち望んだ1枚となった。
その効果もあってか、このアルバムではじめてスガシカオの楽曲に触れるファンも多かったようである。
ちなみに、スガの作品の中では唯一アルバムでチャート1位を記録している。
アルバム全体は世界観が統一されており、とても“B面集”とは思えない。
コアなファン以外はオリジナルアルバムとして認識していんじゃないかと思う。
実際、ボクもこのアルバムを5枚目のオリジナルアルバムだと最近まで思っていた。
このアルバムから数年後には『 Sugarless II』が発売されるが、どちらのアルバムも、ライブに来てくれる客への演奏リストの提供という意味合いもあるようである。
曲 目
- マーメイド
- ユビキリ
- 夜空ノムコウ
- ぬれた靴
- 夏祭り
- ココニイルコト
- バクダン・ジュース(original)
- ひとりぼっち
- うきぶくろをもって
- これからむかえにいくよ
- 8月のセレナーデ
- Room201
- 坂の途中
1. マーメイド
スガシカオのアルバム1曲目は挑発的なものが多いような気がするが、この曲もそう。
伝説の人魚の肉に例えて、大人になりたくないモラトリアムを皮肉っている。
(勝手な解釈)
大人じゃ無いふりをして汚れないようにしているつもりでも、この前いやらしい大人のにおいがしてたよ。
汚い大人にならず少年のまま輝いていたいなら、人魚の肉を食うしかないんじゃないか。
ボクはきたなかろうが、なんだろうが年相応に進んでいくことを決めたんだ。
人魚の肉はものすごいにおいがするし、たどり着いた者もいない。
そんなものと引き替えに、こどもごっこを続けるつもりかい?
2. ユビキリ
森高千里への提供曲「まひるの星」の歌詞差し替え版。
ここから3曲続いて、昔の彼女を思い出す歌が続きます。
この曲は「君との約束」を歌ったもの。
「夜空ノムコウ」は「君に語った夢」を歌ったもの。
「ぬれた靴」は「君に見せられない今の自分」を歌ったもの。
3. 夜空ノムコウ
ご存じ、SMAPへの提供曲で教科書にも載りました。
スガのこれまでのアルバム収録曲では唯一と言っていいと思いますが、スガ以外(川村結花)が作曲しています。
スガシカオが1枚目のアルバムを発表した後に依頼がきた作品で、
北海道のライブに向かう飛行機の中の1時間で書き上げたとかいう逸話がある。
SMAPの原曲を聴いたとき、ものすごく衝撃を受けたのを覚えていて、これでスガシカオの名前を覚えたと言ってもいいぐらい。
もし、スガの名前が「作詞:早乙女岩夫」とか日本名だったら、これほどのインパクトでは覚えられなかったと思う。
それではこの「夜空ノムコウ」はどうかというと、SMAPで聞き慣れていたからか、しっくりこないところもある。
いろいろ考えると、アレンジかな。
さびた鉄のようなストリングスの音が大きくリズムを刻んでいるが、どうにも檻に入れられているようで窮屈である。
それから木村拓哉パートの部分に代表される複数での歌唱との比較。ハモって歌っていたSMAPに比べてしまうと、ちょっと物足りない。
自分の作曲じゃない曲なので、一人カラオケ状態というのも関係あるのかもしれない。
結局、聞き慣れているかどうかとも思う。
一つ言えるのは、普通にスガシカオがこの曲をリリースしても、世間には今ほど認知されなかったと思う。
これはSMAPはやっぱり凄かったな、と言ってるだけですよ、念のため。
やはり、SMAPが歌う、SMAPの世界観の歌だなと思う。
4. ぬれた靴
10枚目のシングル「AFFAIR」のカップリング曲であり、10周年記念のファンアンケートでの1位大人気曲である。
ボクの中でもこの曲はスガシカオのベスト3に入ります。
ボクはこの曲をスガシカオ版「夜空ノムコウ」だと思っていて、曲をわざわざ連続でアルバムに収録しているんじゃ無いかと勘ぐっている。
「夜空ノムコウ」はSMAPのもので、オレの「夜空」はそんなきれいで前向きじゃ無いよ、と。
カップリングのシングルは「夜空ノムコウ」の2年後の発売です。
SMAPで「夜空」が売れて、その評価を本人が咀嚼して、思うところあり「ぬれた靴」を作ったとすると、ボクの推論もおかしくないかなと思う。
歌詞の内容は「夜空」と近く、むかし付き合っていた君と想像したあ位置にボクはたどり着いているのかな、少しは進んでいるのかな、というもの。
(こんな内容)
同級生の結婚式の帰り道で、雨が降ってきて大学時代の仲間と中華料理屋に入った。
「最近仕事はうまくいっているの?」と聞かれ、適当に相づちをうったけど、うまくいっているわけなんか無いよ。
通りに面したガラス窓が雨の湿気で曇ってきたのをじっと見ていると、自分の世界に入ってしまった。
「あれ、こんなどうでもいい話、前にもしなかったっけ?」
(歌詞より抜粋)
もうあきれてしまうぐらい ボクの毎日は
だらしなく過ぎ去ってしまう
ボクはあの夏の日から どれだけきたんだろう
たいした事もできず みんなそう思うのかなあ
雨があがるまで、もう少しどうでもいい会話を続けよう。ぬれた靴が乾いてしまうまで。
————————
この曲が非常に気にかかり当時ヘビーローテーションしていた。
結構地味な歌だと思っていたので、ファンの間でも人気(デビュー10周年時)だったのには正直驚いた。
だって、曲の出だしが「なれないスーツを着て結婚式に出たら、大雨にあってつかれちゃった」ですからね(笑)
ライブで是非聴きたい曲だが、まだ音源でも、実際のライブでも聴いたことが無い。
(10周年までスガを支えた実力派バンド)FAMILY SUGARが復活したら是非ともやってほしい曲の一つである。
5. 夏祭り
8枚目のシングル「あまい果実」のカップリング曲。
「あまい果実」はスガシカオ絶対の自信作としてリリースした作品。
アレンジが秀逸で、夏祭りの雰囲気が満載である。
夏祭りの日、沢山の人のそれぞれの願いを集めて、ながい夏の日が見送られていった。
シングル曲「光の川」に通じるようなモチーフの曲である。
6. ココニイルコト
SMAPへの提供曲で、7枚目シングル「夜明けまえ」のカップリング曲。
(歌詞より抜粋)
ゆがんだ光は ココニイルコト
伝える全ては ココニイルコト
SMAPも解散しないで、ココニイテくれたらよかったのにね。
7. バクダン・ジュース(original)
村上春樹の小説「アフターダーク」に登場する曲。彼の小説で日本人アーティストの曲が記されるのは非常に珍しい。
ただ、ボクは逆にこの曲から村上春樹の小説「羊をめぐる冒険」のキッチンの一場面を感じる。
もともとスガシカオは村上春樹の大ファンで、デビューアルバムを試聴盤として全く関係ない村上氏に送った。
村上氏は、すくなくとも自分の言葉で音楽を語っていると評し、それ以来、しばらくの間、スガシカオの音楽(おそらく2枚目以降も)は村上氏の仕事場のミュージックローテーションに加えられたということです。
そういった村上、スガの相思相愛的なものを凝縮した1曲です。
4枚目のシングル「愛について」のカップリング曲。
8. ひとりぼっち
最初のシングル「ヒットチャートをかけぬけろ」のカップリング曲。
アコースティックな雰囲気にのせて淡々と歌が進むが、後半、急にボーカルがシャウトしてノイジーなギターが乗ってくる。
ひとりぼっちのうた。
9. うきぶくろをもって
3枚目のシングル「ドキドキしちゃう」のカップリング曲。
スガシカオというと言葉の魔術師というイメージがあるが、この曲に関してはちょっとよく分からない。
深い意味があるのかないのか。
せめてもう少し、思わせぶりなキーワードを入れてくれよ、と思ってしまう。
10. これからむかえにいくよ
2枚目のシングル「黄金の月」のカップリング曲。
スガシカオ初期の代表曲のカップリングだけあって、良い曲です。
「あまい果実」に通じる、ちょっとストーカー的な怖さがある曲です。
スガシカオに一般のオーディエンスが期待する者を十分に感じられる1曲です。
実際のライブでは、当時、ジャズ風のアレンジをして大部凝った演奏をしていました。
アレンジを変えて、それで魅力を増すというのは、それだけ力を持った曲だからだと思います。
このジャズ風アレンジは前アルバム「4Flusher」ボーナスディスクに入っています。
11. 8月のセレナーデ
たしか、この曲はリリースまで時間が無くて、タイトルは適当につけた、仮のものをそのまま使用した曲。
正直、ボクには関係ない曲、と思っていたら、最高順位は18位と、当時のスガシカオのシングルにしては悪くない。
前曲が「AFFAIR」で良かったという理由もあるのかな。
ボクが関係ない曲と言ったのは、ボクがスガシカオの曲に求めているものとは違うという意味です。
ほのぼのしない、スガさんが好きです。
12. Room201
仕事もしないで明け方に寝る癖ついてしまった。
君との距離も少し離れた気がした。
いろんな言葉がちらかったままだけど、懸命に君に向き合おうとするけど、ここからどうやって抜け出せるんだろう。
すごく閉塞感のある、せつない歌です。
13. 坂の途中
5枚目のシングル「ストーリー」のカップリング曲。
人生の教訓を坂道に例えて歌詞にしているよう。
坂道はものすごく長いから、1度休憩を取ったら、もう振り返らないで上ることだよ。
まだ半分だと思って、暗かったり、疲れたら電話ちょうだい。
君ならできるからね、絶対。
ボクがついているからね。
はじめてのお使いのようですね。
■『PARADE』スガシカオ 2006年 レビュー
■『TIME』スガシカオ 2004年 レビュー
■『SMILE』スガシカオ 2003年 レビュー
■『Sugarless』スガシカオ 2001年 レビュー