『SMILE』スガシカオ 2003年 レビュー







スガシカオ 『 SMILE 』レビュー

このアルバム

『 SMILE 』は、2003年に発売された スガシカオ 5枚目のオリジナルアルバムです。

前作、前前作のアルバムは、セールスこそ好調だったものの、スガ自身は決して納得のいくアルバムでは無かったと思う。
またこのアルバム制作の前に曲が作れないスランプに陥っており、それを打破するために山梨山中にある一軒家に機材一式を持ち込み一人こもって曲を制作した。

現地に向かう車の中では、ミスチルの桜井から送られた試聴盤「HERO」をずっと聴いていて、「オレもいい曲を書かなくちゃな」と発憤したらしい。本人にとっては再デビューぐらいの意気込みで作ったアルバムと思われる。

ちなみに、デビューアルバムには「月」をモチーフにした2曲を収録したが、このアルバム曲中の歌詞にも何度か「月」が出てくる。確かな決意と存在の象徴としてスガシカオの「月」があるのかもしれない。

ボクの中では、このアルバムから3作(TIME、PARADE)を、勝手に中期三部作と位置づけている。一番好きで一番聴いたアルバムたちである。



 曲 目

  1. Thank You
  2. アシンメトリー
  3. 優等生
  4. 桜並木
  5. 青空(album version)
  6. Go! Go!
  7. サヨナラ(album version)
  8. あだゆめ
  9. はじめての気持ち
  10. 気まぐれ (album version)

1. Thank You

ギターの重厚なリフで曲がはじまるインパクトのあるアルバム1発目。
「ねぇ、明日 しんでしまおうかしら…」ではじまり「ありがとう ありがとう ぼくにウソついてくれて」で終わります。歌詞に「月」が出てきます。

当時ちょっと嫌なことがあって「ねぇ、明日 しんでしまおうかしら…」って鼻歌を歌ったら、幼稚園児の娘が何かを感じて「ダメッ!」って大声で制しました。嬉しかったし、ちょっとボクにとって特別な曲です。

またこの曲をかけていたら、娘が「どうしてウソついてありがとうっていうの?」と聞いてきました。ボクは「ウソにも自分のためのウソと相手のためのウソがあるから、スガちゃんは自分がつらくないように相手がウソをついてくれたんだと思ったんじゃない」って説明しました。伝わったんだか、どうだか。

こういった話の種になるだけの濃度の高い曲で、ある種の割り切れなさ、アキラメ、怒り、寂しさを表面上さわやかに、その実ドロドロと歌っています。

2. アシンメトリー

ドラマ『整形美人。』の主題歌。

桑田佳祐が、期間限定の冠番組「音楽寅さん」で、「寅さんが選んだ21世紀ベストソング20」の19位にランキングした曲でもある。桑田の独特な選曲ではあるが、あの桑田佳祐に選ばれて嬉しくないわけがないだろう。

この曲の歌詞は本当に秀逸で、ボクみたいな一般人には絶対に書けないと身の程を知らされてしまう。

(歌詞から抜粋)

涙の色はきっと にぶいぼくには見えやしないから

(歌詞から抜粋)

半分に割った赤いリンゴの

イビツな方をぼくがもうらうよ

二人はそれで たいがいうまくいく

などなど。詞に「月」が出てくるのはこの曲にかけるスガシカオの決意の表れだろう。

また、次の歌詞には村上春樹の処女作「風の歌を聴け」の影響が見られる。

(歌詞から抜粋)

手に入れたものは自由じゃなく

自由のまがい物ばかり

失くしたものは いちいち憶えちゃいない

曲の出だしとサビも女声コーラスときれいな三声でハモっており、聴くものを引き込む。

ああ、女声コーラス、アマゾネスの声が懐かしい。

FAMILY SUGAR(初期のバンド)復活しないかな?



3. 優等生

知ってました?

優等生には白がよく似合うんですよ。

そしてそれを、ボクのすこし黄色いドロのようなもので汚してしまいたいんです。

それでも君は優等生だから笑顔を忘れないはずだよね。

ボクはただ君の顔がゆがむところやキタナイ言葉を叫ぶところが見たいだけだよ。

メチャクチャにしても。

笑ったままでいてよ、白いシャツが汚されたり剥がされたりしても。

優等生じゃない君に魅力は感じないからさ。

ほとんどホラーです

優等生
スガ シカオ
¥ 250

4. 桜並木

歌の中で桜は、どう咲かせるか、どう散らせるかであると、どっかの音楽プロデューサーが言っていたと思うけど、スガシカオの桜はちょっと違う。

桜、4月、はじまり、新しい制服と靴、光といった前向きな希望ワードは全て、主人公の絶望を際立たせるために用いられている。

はじまりでもなく過去を引きずりまくって、誰もいない桜並木の堤防を前に進んでいくよ、ぼくが選ぼうとしている未来へ。

完全には世界観を理解できませんが、暗く後ろ向きな気持ちが、ちょっとだけほんのちょっとだけ前向きになりかけていくような、そんな歌詞・曲・アレンジです。

4曲目ということもあり、スガシカオ自身の非常にデリケートな部分を歌った曲なのかもしれません。

桜並木
スガ シカオ
¥ 250

5. 青空(album version)

東宝配給映画『仄暗い水の底から』主題歌。

「ねぇ、明日はどんな日になるだろう」

6. Go! Go!

今は無きJ-Phoneの「メガピクセルケータイ」キャンペーンソング。

なんかホッとする、ほのぼのソングである。

商売目的の女子に引っかかった間抜けな男の話である。
あやしい壺は買わされていないけど、英語教材は買う気満々で、何か力になれるかなぁと最後の最後まで奇跡を願っている。「うまくいけば英語もしゃべれるようになるしね」と。

PVの作りも独特で、ストーリー仕立てになっている。オープン間近のレストランに、スガシカオが歌の応援に訪れる。女性スタッフに大ファンがいて大喜び、というもの。

埋め込んだ動画では途中からだが、DVDで発売されているビデオクリップ集ではその前の話が数分間ありますので、よかったらご覧になってください。



7. サヨナラ(album version)

「君と 明日サヨナラして あの頃の日々と願いにもお別れするよ」という歌詞。

ちょっと未練たっぷりのサヨナラのような気がする。

だから今日じゃ無く「明日」サヨナラするのかな?

(歌詞から抜粋)

ねぇ いつの日か ぼくにも

うまくサヨナラを伝えてね

これは、それまでボクのこと忘れないでね、って言ってるよね。

(歌詞から抜粋)

いつかユメでもし 君と出会ってしまったら

ぼくはどんな 君はどんな  言葉

最初にいうかな

これも、また会いたい、って言っているよね。

そして、ズルズルといくんだよね。

決められないよね。

8. あだゆめ

OAD『xxxHOLiC・籠 あだゆめ 〜XXXホリック・ロウ〜』オープニングテーマ。

アコースティックにも対応しているし、すごく格好いい曲だと思う。

歌詞も他の曲に比べれば、全然まし?である。
いや、他の人に見せれるという意味で(笑)
そうか、誤解じゃないか。

今、曲をiTUNESで聴こうと思ったら、この曲だけ抜けていた。
間違って消したかな?
またCDからリッピングしなきゃな。

あだゆめ
スガ シカオ
¥ 250



9. はじめての気持ち

この曲の歌詞は人間的にものすごくひどく、突っ込みどころ満載である。

まず、友だちの弟に勝手に主人公(男性)が恋をし、用事が無くても姿を見に行ったりしている。

そして妄想する。

彼(弟)といつか抱き合ったら、君の身体の中に、ボクの身体を全部溶かし込んでしまいたいと。

おいおい、おまえは抱き合うときは男役なのかよ!と当然、ボクは突っ込むよ。

頭が混乱するので、整理する。

「友だちの弟に恋しちゃったけど、その性にノーマルな弟を女役(ネコ)にして抱きたい。オレは男性(タチ)役で抱く側ね」

さすがにこの曲の話題はネット上でも一切見たことが無いし、ファンにも完全に無視されている、状態のような気がする。

「君がぼくの友だちの弟でさえなければ」という歌詞1行を入れなければ、男女間の普通の恋愛の歌である。

が、スガシカオはそれを良しとしない。

はじめての気持ち
スガ シカオ
¥ 250



10. 気まぐれ (album version)

アコースティックギターのアルペジオで始まる、これもまた突っ込みどころ満載の曲である。

通常の恋愛の歌というと、まず自分と相手がいて、大抵の結末はその主人公二人の「意思」の結果である。

例えば歌の中で別れるのは、彼が決めたから、彼女が決めたから、もうダメな雰囲気を察して私が言い出すから、などで、決して、親戚のおじさんに言われたから別れます、とはならない。

でもスガシカオの歌詞では、この曲中「あいつらに笑われちゃうから」と君とは別れることにする、話し合いも面倒くさいしねと。

もう全然、世間の比重が高くて、歌詞中の二人は、雨が降ると水がたまる窪地で恋愛をしているような状態である。

自分たちの気持ちなどより、周りの人間の目が気になる。またそれを言い訳にして、甘んじて受け入れる。

これをスガシカオは「毒」と言っていたように思うが、思ったほど毒は回らなかった、というような発言をいつかしていたような、しなかったような。

ただ、突っ込みどころ満載の曲ではあるが、ボクにとっての良い曲でもある。

気まぐれ
スガ シカオ
¥ 250


『PARADE』スガシカオ 2006年 レビュー
『TIME』スガシカオ 2004年 レビュー
『SMILE』スガシカオ 2003年 レビュー
『Sugarless』スガシカオ 2001年 レビュー