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「ぽろぽろと」名盤レビュー
この曲「ぽろぽろと」 とは
このカテゴリーではいつもアルバム単位で紹介していましたが、この曲だけ特別に「1曲」で紹介させてください。
この「ぽろぽろと」は、アルバム収録曲の1曲でシングル発売もされていません。
このタイトルを今聞いても、なんだか古めかしい印象があると思いますが、発売当初の1978年でも「ちょっと古いんじゃない」という感じの曲でした。
出会いは1985年
ボクがこの曲を聴いたのは1985年ぐらいですが、当時決して熱心な石野真子ファンというわけではありませんでした。
ただたくさんのヒット曲を出していたので、当然知っていて、聴いていて楽しい曲も多く、時々聴くのにいいかなとベスト盤(レコード)を中古で購入したのです。
収録曲は殆どが知っている曲でしたが、その中にこの「ぽろぽろと」が入っていました。
作曲者を見ると吉田拓郎の名前があります。
曲を聴いてみればいかにも拓郎節ともいえる、ちょっと古いような、独特のメロディラインです。
吉田拓郎がこのメロディを歌っても、全然違和感がない、正真正銘の吉田拓郎節です。
作詞はさすがの阿久悠大先生で、(おそらく曲先だと思うのですが)このメロディに合わせてちょっと古臭いような、それでいていくらでも共感できるすばらしい歌詞をつけてくれました。
デビュー曲の候補?
このコンビは、「狼なんか怖くない」「私の首領」のヒットシングルを作ったコンビでもあり、この「ぽろぽろと」もデビュー曲の候補に入っていたということです。
もし、この曲が石野真子のデビュー曲に選んでいたら、彼女の性格付けや、歌の傾向ががらっと変わっていたでしょう。
吉田拓郎がデビュー三ヶ月前の石野真子をみて、「こんなに太っていてデビューできるのか?」と言ったということですが、もしもデビューまでに体型を仕上げられていなかったら、ボクはこの「ぽろぽろと」がデビュー曲に選ばれていたのではないかと勝手に推測しています。
というのも、本当のデビュー曲「狼なんか怖くない」をぽっちゃりした女の子が「あなたもオオカミに変わりますか~?」と歌ったら、ちょっとしたジョークみたいですよね。
「狼なんか怖くない」はやはり可愛い娘が歌って成り立つ歌です。
一方、「ぽろぽろと」は歌詞を読んでもらえば分かるとおり、殆ど相手に対する自分の感情を歌っているので、基本的に歌い手の容姿は関係ありません。
森昌子の例で言うと、当時ルックス的に華やかさがなかった彼女ののデビュー曲が一方的な恋心をうたった「せんせい」で大ヒットさせたことを考えると、石野真子のデビュー時も状況は同じだったのかもしれません。
2016年どうしても聴きたくなった
ということで、当時、この曲をレコードで入手し時折聴いていましたが、時代はレコード盤からCDへの切り替えの時期であり、レコード盤を全てを実家に移動してからは全く聞く機会はなくなってしまいました。
往年のヒット曲であれば、何かしらCDに収録されているのですが、この「ぽろぽろと」だけは現在発売されている石野真子のCDの殆どに収録されていません。
もう30年ぐらいこの歌を聞いていないボクの心はこの曲に飢えており、ときどきあのLP盤はどこにあるのかな?などとぼんやり考えたりしていました。
「ぽろぽろと」がこんなにお気に入りの曲だったなんて、ボク自身も気づいていなかったため、実際に聴いてみてこの執着は本物なのか、単なる懐古趣味だったのか確認したいという想いもありました。
Amazonで石野真子のベスト盤を調べてみても、以前発売されていたベストには収録されているのに、同じものを再販した際(現在流通している版)には、「ぽろぽろと」1曲だけが外されていたりと、この曲だけ(デビュー曲選考も含め)運命にもてあそばれているような、何かに邪魔されているような不思議な感覚でした。
本人も好きな曲だった
そして何気なくYOU TUBEの検索窓に「ぽろぽろと 石野真子」と入れてみたら、なんと数年前のテレビ番組で彼女自身がギターの弾き語りで同曲を歌っている映像があるではないですか。
ああ、この曲をいいと思っているのはボクだけじゃないんだ、しかも石野真子本人も好きな曲に違いない、となんだか嬉しい気持ちになりました。
その後、このページのトップ画像のアルバム「TRUTH」で同曲をセルフカバーしていること、石野真子のCDではなく昭和を題材としたコンピレーションアルバム「想いうた~歌姫フォーク歌謡曲」に同曲が収録されていること、を突き止めました。
「TRUTH」のセルフカバー曲はiTunesでダウンロード、「想いうた~歌姫フォーク歌謡曲」はGEOの宅配レンタルで借りて、ようやく30年ぶりの歌を堪能できたのでした。
もう巡り合えないかもしれないので、宅配レンタルのオリジナル曲は最高音質の320kbpsでデコードしておきました。(違法ではないので念のため)
曲 目
作詞: 阿久悠、作曲: 吉田拓郎、編曲: 鈴木茂
懐かしんだり、アルバムの雰囲気をお楽しみください。
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1. ぽろぽろと(1978年オリジナル)
もともとはこの石野真子2枚目のオリジナルアルバムに収録されていたようです。
歌詞をネット検索してみましたが、全然出てこなかったので、ちょっと一部を耳コピで掲載。
【1ばん】
髪を切ってしまいたいと向かう鏡に ぽろぽろ涙 ひかります
ばかねあなたこんなことで泣いてしまって くちびるだけが 笑います
夢から覚めてはじめて 気付いても 夢の中へ戻ることはもうできない
繰り返しになりますが、「髪を切ってしまいたいと向かう鏡」などの表現は、発売当時でも十分に古い表現・古い習慣だったりしますので、わざとそういうことを意識させるように作詞されています。
「くちびるだけが笑います」の一文で、「笑おうと無理してみるけど 笑って見えるのはくちびるの端がちょっと上がるだけで全然笑えていない」を表現していたりと、作詞者のいぶし銀のテクニックが随所に光ります。
【2ばん】
風が遠く運ぶように消えてしまった あのひと今はもういない
今になって泣いてみても遅いことだと わたしはわたし 叱ります
季節が変わり 景色が変わっても 鳥のようにはしゃぐ ことはもうできない
「今になって泣いてみても遅いことだと わたしは わたし叱ります」
ってわかってはいるけど、涙はでるんです。
「季節が変わり 景色が変わっても」って文もうまいですね、年を重ねて住んでいる場所が変わってももう失恋前にはもどれないって、一文で表しています。
同じぐらいの時期に石野真子をテレビで見ていた人には是非聞いてもらいたい曲ですね。
2. ぽろぽろと(2003年セルフカバー)
このアルバムの中ではアコースティックバージョンで、この曲だけセルフカバーしており、他の曲は全部オリジナルのようです。
歌手や声優がすごいと思うのは、何十年経っても声の質は変わらないんですね。
女性はある年齢を過ぎると高音が出にくくなると言われるけど、彼女に対しては全くそんなことがないように聴こえます。
かえって、余計な周波数の音がカットされていて澄んだ声に聞こえるというか、とにかく上手いです。
3. ぽろぽろと 2013年 コンサート(おまけ)